要介護おじさん
うおーん!
いつの間にこんなゲーム作ってたのん!
「こんなゲーム誰かツクールで作らんかな」「こんなゲームいつかツクールで作りたいな」なんて昔からぼんやり考えていましたが、それが見事に形になったようなゲームでした。
かわいい女の子たちに介護されながら冒険するのは最高ですね。
ガンガン突撃してガンガン敵倒してボロボロになってくるミィシアちゃんに終始ハラハラしてました。
同作者さんの作品「人類滅亡後のPinocchia」もそうでしたが、今作も良い感じにミニマルにまとまってて楽しいですね。
作者さんのブログでは引き算の美学について語られていました。うーん、良いこと言うなあ。わかるマン。
あと氷晶の洞窟の「滑って楽しいだけのツルツル滑る床のダンジョン」ってコンセプトには草。確かに冷静に考えたら、あのダンジョン明らかに何かがおかしいですね。普通の氷のダンジョンではない。
怪獣大決戦の発想もすごい。ザコ敵と強敵、あるいは強敵同士をぶつけて消耗させてから戦うってのはゲームではあまり見かけない表現だったので、ちょっと嬉しくなっちゃいましたね。「うひょー! ここまでやるか!?」って感じで。
シナリオ面についても、前作のピノキアをプレイ済みなので「うひょー! ピノキアのあのラストからこの展開になっちゃうの!?」って感じで草生えまくりました。ピノキア未プレイの人は割と早い段階で主人公と人形たちとの関係性を察せられると思いますが、ピノキアプレイ済みの人は薄々気づいているものの具体的に名言されるまではその考えから目を逸らしたい、考えたくないって感じになってすごく面白い塩梅だと思いました。決定的なシーンが訪れるまで「いやいや、まだわからんぞ……全てミスリードかもしれん……」って思い続けてました。
んで、ちょっと引っ掛かりを感じた点をいくつか。
まずはアイテム保有枠が少なすぎ! もうちょっと初期枠増やすか、せめて最初からレシピ無しで倉庫拡張させてほしかったです。
どうせ後で作れるだろうし……ってことでライフエンハンスとかセンスエンハンスとか、解体すらせず(できず)に捨てちゃいました。初見プレイだとどの素材が何にどれだけ使うのかわからないので、素材の保有優先度が高くなってしまいます。
私は倉庫拡張レシピの入手が若干遅かったのでかなり苦しみました。
次に、アイテム周りの評価。
ウィンドエンハンスとライフエンハンスの性能、微妙じゃないですか?
どちらも上昇値がしょぼすぎるので、その枠に回復薬積むのが正解になってしまう気がします。
ウィンドエンハンスについては、大雑把に計算すれば最大HPに1.09倍の補正が付くような感じになりますが、あまりに効果が小さすぎます。ダメージの機会が減るので一応回復薬の節約にはなりますが、それなら攻撃力上げた方がよっぽど被ダメージの機会を減らせると思います。
ミィシアに8枠装備させれば完全回避できるかな?と思い試してみましたが、かなり粘り強く回避するようにはなるものの完全回避には至りませんでした。仮に完全回避できたとしても、射程も攻撃力も1なので実用性は皆無ですが。
1個あたりの回避率上昇を大きくしつつ、複数装備するごとに効果は小さくなり、最終的に回避率100%に達することはない、って感じにできれば良かったんですけどね。1個装備で+40%、2個装備で+60%、3個装備で+70%、4個装備で+75%、5個装備で+77%、6個装備で+78%……あかん、7個目で上昇値がゼロになってもうた。「この装備は1個までしか装備できない」ってすれば簡単ですが、コンセプトが壊れちゃうのがよろしくないです。シンプルなアルテリオス計算式と回避率バランスの両立は難しいですね……。
ところでこちらをご覧ください。
うーん、良い太もも。
じゃなくて、+9%を8個で+71%となっておりますが、これは小数型変数の誤差? 見かけ上の問題で、最終的な回避計算の結果には影響ナシ?
ライフエンハンスは純粋に最大HPが1.5倍になりますが、それでもまだ弱いです。1枠に5個積み込める回復薬を装備した方がずっと良いです。最大HPが上がれば瀕死になるまでの猶予が長くなり、(完全回復薬を使えば)回復の頻度が減るので攻撃機会が増え、結果として攻撃力が上がる……というのは理屈の上での話であって、実際のところそんなに長時間の殴り合いになる機会はなかなかありません。
装備枠に対する総回復量についても、ライフエンハンス1個と完全回復薬2枠でようやく、完全回復薬3枠の総回復量を上回ります。そんなスペースありませんて。
(表は「HPが4丁度になった時点で完全回復薬を使用」する条件で計算しています。実際はそれよりも少ないHPで使用することもあるので、もう少し回復量と総回復量は増えます)
そもそも完全回復薬の総回復量が悲しいことになっていますね……。3~4枠使ってようやく回復薬の総回復量を上回ります。実プレイ時もきちんと計算していたわけではありませんが、完全回復薬持たせるよりは普通の回復薬持たせた方が効率ええやろって感じで進めていました。完全回復薬は主人公のHP回復用。
回復薬の類は一切持たせず最大HPを上げた上で素材収集→拠点に戻って回復、のループで回復薬を節約/貯蔵するのが、おそらくライフエンハンスの最たる用途かと思われますが、先に述べた通りアイテムの保有枠がきつくてなかなか余剰資材を抱えられません……。
というかまあ、攻撃力上げるのが強すぎますよね。どんなゲームデザインでも(なんなら現実世界ですら)火力=正義の方程式はなかなか覆せないものですが。
個人的にはソードエンハンスの作成難易度をもう少し上げて、ソードフレイムは削除、エクスブレードは合成不可で数量限定、くらいが良かったんじゃないかなあと思いました。
それか、攻撃力以外の装備の効果を高めるとか。多くのゲーマーは火力を優先する傾向にあるでしょうし、その裏をかくようなバランス調整にするとか。……単にストレスが溜まるだけでしょうか?
この辺のバランス取りは難しいですよね。
でも試しに人形全員から武器を取り上げて戦わせてみたら、わちゃわちゃの泥臭い乱闘が始まって、これはこれで趣がありました。
バリアシールドや爆発反応装甲は結局1度も使いませんでした。所持枠も少ないですし、何より貴重な鉄鉱を消耗品には使えませんて。
骸骨剣士が結構優秀だったのは嬉しかったです。こういう召喚系のアイテムはこの手のゲームだとあまり役に立たないことが多い印象があるのですが、この作品ではコストも戦闘力もそこそこにまとまってて良かったです。時間経過やマップ切り替えで消えたりしないので、アイテム枠にも優しい。欲を言えば、もう少し早めにレシピを入手したかったです(そしてもっと早くから多用したかったです)。
このゲームすごく楽しかったですし、多くのアイデアと丁寧なゲームデザインによってかなり高い完成度になっていたと思いますが、同時に、あまり発展性がないように思えました。
なんというか、これ以上膨らませようのないゲーム、という印象を受けました。
正直、私にはこのゲームを更に面白くするようなアイデアが全く思い浮かびません。
ぱっと誰しもが考え付きそうなこのゲームを更に発展させるためのアイデアとしては「主人公も戦えるようにする」「人形への命令をもっと細かく指定できるようにする」「人形の個性を強める」の3通りが考えられそうです。
「主人公も戦えるようにする」方向で調整するとアクションゲーム寄りの調整が必要になり、完全に別ゲーになります。そもそも作者さんが「アクションゲームが苦手」ということで主人公から攻撃手段を取り上げたのですから、この調整は本末転倒ですね。私もこのゲームは主人公が戦えないからこそ面白いと感じていますし。
では「人形への命令をもっと細かく指定できるようにする」はどうでしょうか。
「リメイはこっちの遅くて頑丈な敵を」「ミィシアはあっちの速くて柔らかい敵を」「シキは主人公の傍で迎撃」「エスギニルは向こうの敵が沢山まとまってるとこに突っ込んできて」って感じに命令を出せるようにする……どうやって? どんな実装をしたところで操作は煩雑になるでしょうし、私はそういうのあまりやりたくないですね。楽しいと思う人も決して少なくないでしょうが。少なくともツクールでそれをやるのは無茶な気がします。
陣形を組むぐらいだったらいけますかね? インペリアルクロスとか玄武陣とか。いや、それ以外必要な陣形ないじゃん。
では「人形の個性を強める」方向。
例えば、人形ごとに行動指針を持たせる。ミィシアはHPの低い敵を優先的に攻撃するとか、シキは引き撃ちして戦うとか。敵からは逃げてアイテム回収に特化とか、執拗にパイ○リを迫るとか。いろんな行動指針を持った人形を沢山入手し、攻略するマップごとに連れていく人形の組み合わせを考える……これなら今のゲームデザインを損なうことなく発展させることができるでしょうか?
いやでもそれ本当に面白いのでしょうか……? ていうか言うほど行動指針のバリエーション思い浮かびませんね。
というわけで、もしこのゲームシステムを発展させた新作とかが出たら、私ぶったまげます。